「代償分割」とは、現物の財産を相続した人がその代償として、他の相続人に対し債務を負担する遺産分割の方法です。相続人間で土地などの財産が遺産の大部分を占めるときなどに使われます。相続人が甲、乙の2名(法定相続分各2分の1)で、甲が、不動産(相続税評価額80百万円、時価100百万円)を取得する代りに、時価の半額(50百万円)を乙に支払う代償分割を行ったとします。この場合に、代償財産を時価ベースの50百万円として計算すると、次のように、甲と乙の取得財産の額に不均衡が生じ、相続税額もアンバランスになってしまいます。
甲 30百万円(=80百万円(相続税評価額)-50百万円)
乙 50百万円
しかし、甲と乙は、もともと不動産を各2分の1の法定相続分で分けるため上記の代償分割をしたわけですから、相続税額も平等になるべきという考え方があります。2分の1ずつ現物分割した場合には同じ金額(80百万円÷2=40百万円)が取得財産の額となるのに、代償分割をしたら不均衡が生じることになってしまいます。つまり、この不均衡の原因は、不動産の時価と相続税評価額が乖離していることから生じているわけです(一般に、相続税評価額は、時価の80%を目処に路線価等で設定されています)。そこで、上記の50百万円について、次のような調整計算をすることができるようになっています。
A(代償債務の額)=50百万円
B(不動産時価)=100百万円
C(相続税評価額)=80百万円
代償財産の額=A×C/B=50百万円×80百万円/100百万円=40百万円
この調整計算をすると、甲と乙の取得財産は次のようになります。
甲 40百万円(=80百万円(相続税評価額)-40百万円)
乙 40百万円
代償分割の調整計算によって、相続人間の税金支払い額も均衡がとれることになります。
遺産分割は様々なケースが考えられますので、あくまでもすべて時価ベースで均等額(税金まで均等額)で、と考えた場合の話です。現金をもらう方が少なくなるというケース等も多々あると思います。