医療の場における人間関係には、①医療者対患者、②医療者対医療者、③患者対重要な他者、④医療者対重要な他者の4つのパターンがあります。医療者と患者の人間関係のコミュニケーションの阻害要因には、①役割の不確かさ、②責任をめぐる争い、③力の差、④意味合いの違いの4つがあります。今回は、役割の不確かさについて説明していきたいと思います。
患者さんは、医学や病院組織や病院関係者に不慣れな訪問者として突然入院してきます。そして、患者は毎日様々な医療者と会わなければならず、医療者側もめったに自己紹介などしません。複数の医療者から矛盾した指示を受けることもあります。このようなことから、患者は自分がどのような役割を期待されているか、それぞれの医療者にどのようなことを期待してよいのかなど各医療者の役割などもよく分かっていません。よって患者は健康上の不安を口にすることをためらっていき、医療者は患者が何も言ってこない場合、患者が抱く不安や懸念はないもの、もしくは微々たるものと解釈します。患者は「どこどこが痛い」など身体の不安だけを告げ、不安な感情は口にしなくなり、医師とのコミュニケーションが欠落していき、最終的に患者は医師から見放されたと感じ、医事紛争に繋がってくることがあります。
解決策としては、①医療者は患者に期待することを明らかにし、②患者に自己紹介をする。それから、③医療チーム内で患者に対する指示が矛盾しないよう徹底します。最後に、④医療者は、患者に期待される役割を段階的に、定期的に話し合っていくことが必要です。