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データベース思考について 九州大学大学院 馬場園明教授

令和3年8月5日に開催されました九州大学大学院馬場園明教授の医療福祉経営マーケティング研究会に使用されたパワーポイント資料(作成者 窪田昌行氏 株式会社CCRC研究所代表取締役)に掲載されていた馬場園明教授の言葉です。馬場園教授にも確認をとり、掲載させていただきました。

馬場園先生は医療だけでなく介護福祉分野にも精通しており、医療経営・管理学専攻課程では医療経営学、医療政策学、医療マーケティング学、医療オーガナイズ論など幅広い講義をされている先生です。先生の知識や考え方は、医学部出身と思えないほど様々な分野に及んでおり、言葉の使い方、表現力はすばらしく、脳内のシナプスとシナプスが神経伝達物質でつながるような感覚というのでしょうか、さまざまな視点から、あらゆる角度から鳥瞰しているからなのでしょうか、いつも気付きを与えていただいているように思います。

データベース思考

「本を読み、知識・スキル・マインドを習得することの重要性」

• なぜ、本を読むのかである。知らないからである。知りたいからである。そして、わからないからである。わかりたいからである。知ることができたこと、わかったことを、自分のデータベースに追加するためには、良い本を数多く読むことが最も効率の良い方法である。人に会って話をしたり、さまざまな経験をすることも有益であるが、それではデータが不十分である。
• 私たちが生まれて投げ出された世界には、幸運なことに言葉が存在する。人間は言葉で学び、言葉で設計し、言葉で伝え、言葉で自分の人生を作っていかなければならない。そのためには、目に見えるもの、聞こえるものだけでは
なく、目に見えないものもデータベースに入れていかなければならない。
• わかりやすい多くの良書を読み、理解を深めることによって、それらを今までの経験や学びによって作ってきたデータべースを次から次に更新し続けることができる。

データベース思考2

「データベースは常に更新が必要」
• データベースはコンピューターでたとえればHD(ハードディスク)にあたる。データベースを追加するには、ソフトが必要になる。このソフトも言葉を使って改善を繰り返しすることで改善することができる。
• そして、重要なことは、自分のデータベース、感情、思い、他者、社会を鳥瞰して、何を行うか、何を話すか、何を構築するかを組み立てるための統合能力を意識することである。統合能力を磨いていくためには、公正、善悪、優先順位といった抽象的な概念の深化が必要であり、その努力を続けることによってこそ、より良く人を支援することができ、良い社会を作ることに貢献することができ、それによって自分も利益を得ることができるのである。

以下は、馬場園教授が作成した医療オーガナイズ論テキストの【はじめに】の一部抜粋です。

 医療オーガナイズ論では,医療を成立するための問題解決能力を高めるため,因果関係論,組織マネジメント論,リーダーシップ論,医療財務,健康であるための支援,生命倫理学などを取り上げる.医療をオーガナイズするためには,医療が成立するために関わる要件や判断についての理解が必要であるからである.

 医療をオーガナイズすることは簡単ではない.医療を成立させるには,患者,被保険者を含めたさまざまな立場の人の協力が必要である.しかしながら,これらの利害は一致しない.

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 資源に限りがある状況では,立場によって利害が対立するのは当然であり,誰にとっても理想の医療など存在しない.医療に関して利害が対立する人たちが合意できるように,「定量的なevidence」を国民に提供していくべきである.しかしながら一方, 科学性や合理性だけでは十分ではない.医療は医療側と患者の共同作業であるべきで,そのことが患者のエンパワメントにつながると考えている.このような考え方は, 科学性や合理性だけでは 生まれてこない. 社会的な価値の共有とか合意といった哲学や倫理的な問題も考慮されなければならない.

 医療をオーガナイズするためには断片的な知識ばかりでなく,統合する知恵や技術も必要である.

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 医療をオーガナイズするためには,広い知識と判断力が必要であり,科学性や合理性だけでは十分ではなく,社会的な価値の共有とか合意といった哲学倫理的な問題も考慮されなければならない.

 医療オーガナイズ論は、どれも興味深い分野ばかりでしたが、特に医学・医療における因果関係についての考え方を歴史的な背景・経緯を通じて学ぶことができたのは貴重な経験でした。今までの私の因果関係の考え方を覆すものであったので、ここで学ばなければ人生においてもう学ぶこと(知ること)はできなかったと思います。ここで学んだこと(知ったこと)により、さらにその分野の本を買って読んでみたり、インターネットで調べてみたりすることができました。言葉を知っただけでも人生においてプラスです。分野が違えば一生知ることがない言葉かもしれません。その言葉を知らなければ、ネットで調べることもないのです。調べようがないですね。

 税理士も税金の知識をつけるだけ、あるいは税金の計算をするだけでなく、マネジメント、会社法、不動産関連知識など幅広い知識を身につけ、それらを統合し、リスク分析能力・総合的な判断力などを駆使して、お客様の要望に応えるべきであると考えています。過去の裁判事例に基づいた解釈の安易な適用や合理性のみを追求したサービスでは限界があり、哲学的・倫理的な思考も取り入れることによって、はじめて最高のサービスが提供できるのではないかと考えます。つまり、これは課税当局から租税回避行為として否認されるリスクを常に意識しつつタックスプランニングを行うということにつながり、そこには課税当局が「これは租税回避行為ではない」と合意(納得)するに足る「税理士としての倫理観」も求められてくると考えます。課税当局からチャレンジされ、負けてしまうのは、哲学的な思考や倫理観の欠如、社会的な価値が共有されていないからとも言えるでしょう。

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