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持分なし医療法人と認定医療法人について

某銀行医療チームのベテランの方と話をしている時に「わざわざ認定医療法人にする必要はないと思います」「ただ単に持分なし医療法人にすればよいと思うのですが、、、」ということを聞きましたので、なぜ認定制度が必要なのかについて説明していきたいと思います。

認定医療法人も結局は持分なし医療法人になるわけですので、医療チームの方がおっしゃったように認定を受けなくてもよいのではという発想がでてくるのは当然のことと思います。しかしながら、持分あり医療法人から持分なし医療法人へ移行は長期間に渡りますので、この間に相続が発生する可能性があります。そうなるとせっかく移行を検討し出資持分をなしにして相続税の負担軽減しようと考えていたにもかかわらず、相続税が課税されることになります。このような事態を回避するために認定制度があるといえます。認定医療法人として厚生労働省の認定を受ければ、移行期間の間、相続税は猶予され、その後持ち分なし医療法人へ移行した段階で、猶予した税額を免除することができます。これは、相続が発生した後でも可能です。フローとして次のようになります。「相続開始」→「社員総会」→「厚生労働省へ認定申請」→「認定医療法人の認定」→「死亡退職金支給」→「相続税申告(納税猶予)」→「持分なし医療法人へ移行(納税免除)」

また、一部出資者が自分の持分を放棄した場合には、結果的に他の出資者へ贈与したとみなされ贈与税がかかってきます。この場合は事前に厚生労働省の認定を取っておく必要があります。フローとしては、次のようになります。「社員総会」→「厚生労働省へ認定申請」→「認定医療法人の認定」→「放棄」→「贈与税申告(納税猶予)」→「持分なし医療法人へ移行(納税免除)」このケースについては、放棄する時期を調整することができるので、十分な対応が可能だと思います。

一部の出資者が持分を放棄し他の出資者への贈与税を回避するために医療法人側が財産を譲り受けした形になる贈与のパターンですが、このような行為はその法人を実質的に支配しておけば贈与した資産を自由に取り扱うことができるため租税回避行為ととられます。このようなケースで課税を免れることができないようにしているのが相続税法第66条第4項の規定です。簡単に言うと、「相続対策として非営利法人をうまく使って税負担の軽減を図ろうとしてもそれは認められませんよ。法人側できちんと贈与税を納めてくださいね。」ということが謳われています。

要するに移行認定制度は受けられるメリットが大きいわけですから、これに対して「医療法人側も公共性の高い経営を行うよう努力してください。そうでないならば、国としては相続税や贈与税をしっかり徴収していきますよ。」という強い現れだと思います。例えば、このような点は医療法人から社会医療法人に移行したことによって、それまでのオーナー(理事長)からは銀行が限定根保証をとっていたが、社会性や公共性を十分備えている社会医療法人になったこと、理事長もオーナー理事長から交代したこと等によって、その限定根保証を解除することを認めるというようなこととも共通する考え方であると思います。

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