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因果関係について

因果関係とは、一般的には、二つ以上のものの間にある原因と結果の関係のことであると言われている。古典的な医学的因果関係では検証という考えがなく、権威者の経験で決定されてきた。17世紀以降の英国では、因果関係に関する仮説を証拠に照らして蓋然性を検討する考え方が受け入れられるようになり、18世紀半ばにはデビット・ヒュームが経験主義を批判した。19世紀半ばには、ジョン・スノウが疫学の礎を築き、実行可能性のある仮説を立て蓋然性的な考え方を根拠に因果関係を決定した。      

わが国においては医学における因果関係の考え方としてドイツのコッホが1882年に発表した病原物質が分からなければ因果関係は分からないという要素還元主義的なものが支配的となり、なかなか認知されてこなかった。

ボストン大学公衆衛生大学院の教授であるロスマンは、疾病はいろいろな要因があつまり十分条件となり発生するが、十分条件を満たす要因の組み合わせは複数存在するという因果関係を推論するモデルを提唱した。すべての十分原因の構成要因を明らかにすることが不可能である限り、仮説では限られた要因のみに着目してその他の要因は同一であると仮定せざるをえない。すなわち、絶対的な因果のメカニズムというものは説明することはできないのである。

今日の疫学における因果関係は、仮説を立て、観察を通じて諸要因が疾病に与える影響を定量し、その結果を今まで知られている事実と照らして考察・推論していくしかないのである。

原因と結果に関するデータを得て、そのデータに基づいて思考し、因果関係があるのか因果関係がないのかを推論するのである。さらに、あるとすればその因果関係はどの程度の影響を与えるものなのか、それは無視できるのか、対策が必要なのか、どの程度役に立つと言えるのか、商品化可能なのかを考えたりもするわけである。

我が国においては疫学の考え方は医学界においてなかなか認知されてこなかった。ヒュームは経験主義を批判したし、反証主義も蓋然性的な考え方に批判的であった。医学界は細菌学の発展によりミクロレベルで原因追及を行うようになったため、疫学的な因果関係が採用されなかった。

わが国においては医学における因果関係の考え方としてドイツのコッホが1882年に発表した病原物質が分からなければ因果関係は分からないという要素還元主義的なものが支配的となり、水俣病への対応が遅れた。

一般大衆的には、因果関係というと原因があって必ずその結果がおこると考えてしまいがちであるが、因果関係というのは奥が深いものである。医学、科学、疫学、法学分野などさまざまである。

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